【活動レポート】大人の社会科見学2 ~ ハイブリッドスクーリング編~
大人の社会科見学(※)第2弾は、「ハイブリッドスクーリング」という新しい教育についてです。育休コミュニティメンバーの知人である松浦さんから、実践者ならではのリアルなお話をお聞きしましたので、レポートとしてお届けします。
(※)社会課題に取り組む方、社会に新しい価値を提供しようとしている方など、私たち子育て中の母に「新たな視野をシェアしてくれる方」をゲストにお招きし、育休コミュニティメンバーが、zoomを通じてその取り組みや想いを聞かせていただく会。まさにオンラインバージョンの「社会科見学」です。
★ハイブリッドスクーリング=ハイスクとは?
ハイスクは、年間30日以上、学校以外の地域やコミュニティなどで、子どもたち一人ひとりがその興味や関心に応じて探究する新しい学び方です。
学校に通わずに自宅で学習する「ホームスクーリング」という言葉を聞いたことのある方もいらっしゃるかもしれませんが、「アンスクーリング」「ハックスクーリング」という言葉があるように、学校と敵対関係になりやすいという側面も。
対してハイスクは、学校と家庭学習それぞれのよいところを共存させるというアプローチで、登校する日としない日の両方を持ちながら学んでいくスタイルです。
★松浦さんはどんな人?
秋田県在住、37歳。お子さんは小4(男の子)・小2(女の子)。
日本全国で主に小学生向けのワークショップを行う仕事を十数年しており、大阪から秋田に移住して3年目。
奥さまも同じ会社に所属。
※松浦さんの会社:https://g-experience.org/
★ハイスクを始めたきっかけ
「移住」と「従来の小学校への違和感」という二つの要素が重なったことだそうです。
都市ではなく自由にのびのび暮らせる場所を探していたとき、教育系の起業家も多く人間関係のストレスも見受けられなかった秋田県五城目町と出会い、移住を決意。
一方、大阪では、1人めのお子さんの小学校生活で45分という授業時間の区切りが合わず、そのことにお子さん自身も気づいていたそう。1つの授業にようやく集中しはじめたころに次の授業に移ってしまう…という状況に対して、「学校に行くことは絶対」という学校の先生からのアドバイスに違和感を感じ、お子さんに合った学びの必要性を察して、ハイスクという新たな選択を取られたとのことでした。
★スケジュールと学習内容
気になるスケジュールと学習内容については、奥さまの補足も入りつつ教えていただきました。ハイスクを決断/実行開始したのは奥さまだそうです!
小学校の登校日数が年間約130日あるうち、松浦家では80日は休み、50日は出席。学習発表会、マラソン大会、運動会の応援の練習など、子どもたちが自分で行きたいものを選択するそう。
自宅にいる時は、
7時前に起きる→朝ごはん→9時くらいから図書館(車で30分~40分、蔵書が豊富な県立図書館)→図書館でランチ→夕方まで図書館で過ごす
というタイムスケジュール。
本質に迫るような学び(植物は何をめざしてどう生きているのか、など)を得られないため、教科書は使用しない。代わりに、例えば植物園で植物を観察することで理科の要素を学んだり、お子さんには古いipadを貸与してすららやスタディサプリなどインターネット上の学習アプリをしっかり利用します。
また、母語での言語化能力は重要ととらえ、作文を週に一度習いに行く。英語やプログラミングは、本人の興味が出てきたら開始予定、とのことです。
「子供がやりたいことを選択する」という点を非常に重視されており、履修科目を自身で決めていく、大学での学びに近いイメージです。
子どもの学びが進み、親が教えられなくなるフェーズに来たら、詳しい人を子どもに紹介したり、子ども自身が先生を探す、ということも取り組んでいるそうです。
★学校との連携方法
秋田県は学力平均の高さでも有名ですが、現在お子さんが通学している小学校の校長先生は寛容で、「学校に来たくなったら来ればよい」「各家庭の事情に任せる」という方針とのこと。実際に日本の小学校・中学校は、通学せずとも卒業できる仕組みであり、担任の先生は子どもが休みの日に何をしているか、あまり関心がないそうです。
ただし、相応の教育ができていること/学校と良い関係性の構築を目的として、学んだ内容はシェアされています。
低年齢児に適応障害のような診断があると、小学校入学時に特別な教育を用意されることもしばしば。しかし、改善する可能性はあるし、むしろこだわりが強いことが将来強みになる可能性も大いにあるので、学校とのコミュニケーションをポジティブな方向に変えるだけでも状況が変わったりする、というご意見もありました。
★ハイスクはどんな家庭に向いているか
ホームスクーリングも含め、親が子どもを見てあげられること、教育コンテンツをキュレーションして子供に渡せることが第一条件。そのための時間を親がとれる、そういう場所にいる、という必要があり、現状は起業家やマネージメント職である程度自由に動ける方が選択する傾向が高いそうです。
★中学校・高校はどうするか
あくまで本人次第。親としては、中学も高校もあまり行かなくてよいと思っているそう。中学校は、小学校同様通学せずとも卒業できるし、高校は認定試験を受け、必要であれば大学に行けばよい、というスタンスとのことです。
★これからの未来とハイスクの可能性
起業したい、事業部を立ち上げたい、という人には、良い意味で何かしらこだわりが強い人も多い。ハイスクが狙っている教育効果も、自身の興味関心に気づいたり、やりたいことに集中する時間を増やすことを通じて、子どもの可能性を広げるということ。現在、経産省未来の教室事業も動いており、学校を変える取り組みも行われている状況。学校のデザイン、先生の役割が変わり、ひいては行政や国のシステムも変わっていくのではないか?との期待もあるそうです。
★Q&A①:学校に通っている他のお子さんとの関係は?
放課後は一緒に遊ぶので、友達はいっぱいいる。その中にも「ずるい!」と言う子どもはいて、それに対してはお子さん自身が
「今小4だけど、小6くらいの内容を家で勉強している」
と説明できるようになったそう。
最初は、「自分が悪いことをしているのでは?」と思うところもあったようだけれど、時を経てお子さんも意義を理解している。また、世の中には理解し合えない人もいるということの声かけもしているそうです。
★Q&A②:費用はどのくらいかかる?
毎月3万円くらい。作文の塾(言葉の森)が8,500円、算数は2,000円程度。学校の給食費6,000円、プログラミングや歴史の本が4~5,000円。その他、旅に行った時の美術館など。
★Q&A③:グループワークから学ぶ、という要素は抜け落ちると思われるが、そもそも必要ないと思っているのか、別の形で補っているのか?
学校の友達だけが友達ではなく、出張先などいろんな場所で出会いがある。自分に合う人を自分で見つけてほしい、とのご意見でした。
★Q&A④:「“他の人と違う”ということをお子さんが自分の言葉で言える」という部分に感銘を受けた。どのような声かけを行って、そのような状態になったのか?
大阪時代はホームスクーラーもおらず、集団登校の学校で、「家で勉強しても大丈夫?」「学校に行かないとわが子も言ってくるので困る」というような周りの反応。お子さん自身も、「自分は悪いことをしているのでは?」という思いに陥ることもあったそうです。そのような中で、学校にいる友達全てが合うわけではなく、合う人は自分で探さないといけないこと、自分にとって良い人も悪い人もいるし、誰が該当するかは人それぞれなので、それぞれの自由を尊重しながらお互い理解し合うべきだよね、というような声かけをしてきたそうです。
★Q&A⑤:夫婦でどういう話をしている?年齢が低いと、本人に決めさせるのも酷な部分もありそうだし、夫婦間で意見の違いもありそう。
めっちゃけんかしている!笑 そうです。ぶつかりがある、という大前提でパートナーを選択。子どもが仲裁に入ることも。
自己決定は非常に重要で、自分で作ったり考えたりすると、学びや次に動くことへのエネルギーになる。4歳、5歳でも、どんなに小さな選択でも、「なるほどねー」「そうしたんだねー」と声をかけてあげることが大事、とのことです。
奥さまからは、行動で見せないと相手はわからない、話し合ってもけんかになるので先にやる!というスタンスの共有や、今日何をするか等、2歳・3歳からでも徐々に自己決定の練習はできますよね、というアドバイスもありました。
★Q&A⑥:中一の息子が、時おり学校に行きたくないと言う。家にいても勉強はしないので成績も下がってくるし、家も学校もつまらなそう。どうしたらよいか?
学校も家もどちらも合わない場合、どこか違う場所で、こころを許せる場所を見つけられたらいいと思う。最近は色んなタイプのホームスクーリングを行う人が増えているので、同じような学び方をしている友人や理解ある大人の中から興味関心や合う人を見つけられる。自分で大事なことを決めて生きていった方が、自分の人生に合った選択ができるし、自分に合う環境を見つけられて、自分の生き方の軸が見える。それはやってみて初めて分かることではないか?というご意見でした。
このお話のあと、松浦さんがキャンプファイヤーでオンラインサロンを立ち上げられました。
https://camp-fire.jp/projects/view/121004
1000円/月
こちらでも、松浦家の取り組みをリアルにシェアしてくださるそうです。ご興味のある方、よろしければ覗いてみてください。
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