【イベントレポート】サスティナ気分で地球の今を考えよう!環境活動家 谷口たかひささん講演会

1.イベント概要

2020年7月10日、ドイツ在住の環境活動家&実業家である谷口たかひささんを迎え、日本では報道の少ない気候変動の現状について講演いただきました!MIRAISメンバーだけでなく全ての産育休者を対象にしたオープンなオンラインセミナーという形をとり、73名もの方にご参加いただきました。講演後には参加者同士でグループに分かれての感想シェアと行動宣言を行いました。


子どもたちが生きる未来にも、自分たちが生きてきたのと同じような地球が当たり前に存在する。私達は無意識のうちにそう思っているけれど、本当にそうでしょうか? 特に今年は新型コロナウイルスで生活が一変する中、「今まで当たり前だと思っていたことが当たり前ではなかった」ということを身をもって感じた方も多いと思います。


私達は日々子どもと向き合う中で、何を食べさせようか?どんな服を着せようか?どんな絵本を読んであげようか?と普段は目の前のことばかりを考えてしまいがちですが、このイベントではいつもより少しだけ視野を広く、視座を高く持って地球の今と未来について考える、そんな貴重な機会となりました。

【ゲスト紹介】

谷口たかひさ さん

ドイツ在住の環境活動家&実業家、『地球を守ろう』代表。1988年、大阪府門真市生まれ。関西大学を経て、マンチェスター大学へ留学。現在はグローバルIT企業の役員を務めながら、気候変動の講演および発信を日本全国と世界各国で実施中。2019年9月より日本に一時帰国し、日本での気候危機の認知度向上へ向けて全国ツアーを行い、2019年12月26日に全国47都道府県での講演達成。趣味は旅と勉強で、訪れた国は50ヵ国以上、保有資格は国際資格/国家資格を含め40個。

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2. 講演内容

A)気候変動の今

最近は夏になると毎年全国のどこかで最高気温を更新するといったニュースが聞こえ、つい最近も九州で豪雨が発生し命を落とされた方もいる・・・気候変動とそれに伴う異常事態については知っているようで詳しくはよく知らない、なんとなくマズイのは感じてるけど実際はどうなの?講演の冒頭、谷口さんから衝撃的な事実が伝えられました。

人類生存の危機をもたらしうる「地球温暖化」は確実に進行している。今現在地球上で起こっている気候変動による異常事態…それは干ばつ、生態系の変化、火災、台風/豪雨/洪水、氷が溶けていること。

例えば生態系の変化として、現在さまざまな国・地域でバッタが大量発生したことで人間の食料が壊滅的な被害を受けており、国連が緊急事態宣言を発動。これは気候変動により海面の温度が上昇し、水蒸気量の増加に伴い雨が増えたことが原因のひとつとされている。(気候変動に伴い降水量が増加し、バッタが卵を生む水たまりが増えた)。次に森林火災。オーストラリア全土での森林火災は日本でも連日報道されてたことは記憶に新しいが、これも気候変動による気温上昇が火災につながっているとのこと。そして猛暑。去年の夏は世界各地で記録的な猛暑日が記録されたが、今年2月に南極でも観測史上初めて20度を上回った※1。

この動画は、温暖化により氷が溶けてしまい餌となるあざらし等がいなくなってしまったために餓死寸前になっているホッキョクグマを捉えています。ガリガリにやせ細り、瀕死の状態で餌を探して歩くホッキョクグマを助けることの出来ない虚しさ、悲しさ、気候変動の影響がいかに大きいのかがひしひしと伝わってきます。1分半ほどの映像ですのでぜひご覧ください。

https://www.youtube.com/watch?v=1pn7m9Pn9gc

これらの事象に目を向けず、このまま私たちが何もしない場合、あと50年で地球上で人間が住んでいる地域の1/3がサハラ砂漠の一番暑いエリアと同じくらい気温が高くなり人が住めなくなる。そして世界の人口の1/3が気候難民になる※2可能性があると言われているそうです。

※1 出典:朝日新聞、“南極で史上初の気温20度超 研究者「信じがたく異常」”、2020年2月14日、https://www.asahi.com/articles/ASN2G3J2PN2GULBJ002.html

※2 出典:米国立科学院会(PNAS) 、” Climate niche history of humans” 、2020年5月26日 https://www.pnas.org/content/117/21/11185

B)世界の報道と子どもたちの行動

谷口さんの住んでいるドイツや、講演を行うことも多いイギリスでは、こういった環境に関するニュースは連日トップニュースとして報道されており、人々の意識の高さが感じられるそうです。環境問題に対する意識の高さは大人だけでなく、子供にもしっかりと根づいているのが欧州の特徴とのことでした。実際に谷口さんの活動に大きな影響を与えているのは子供たちであるとのことでした。


当時谷口さんが住んでいたドイツの街で環境デモが発生。その主催者にインタビューを申し込んだところ、なんと主催者は14歳の女の子だったそうです。なぜ学校に行かずこういったデモを行っているのか聞いたところ女の子からこんな返事が返ってきました。

「大人は私たちに将来のために学校に行って勉強しろというから学校に行ったけど、学校で環境のことを学んだら自分たちに将来なんてないということがわかった。環境問題はとても深刻なのに大人は口先だけで何も行動していない。だから学校には行かずにこうやって(デモを起こして)行動している。」

これを聞いた谷口さんは、“大人”の一人してとても悔しくて悲しかったそうです。そして子どもたちにちゃんと行動している大人もいるということを知ってもらうために、子どもたちに胸を張って行動していると言える大人になるために今の活動を行っているとのことでした。

C)未来への希望

日本ではあまり報道されていないけれど、近い将来世界人口の1/3が気候難民になるかもしれない。子どもたちは行動を起こしているのに大人は何も動けていない…頭がクラクラするほどの悲惨な現状を突きつけられ何も言葉が出なくなる私たちに、谷口さんはまだまだ希望があるということを伝えてくださりました。


【”まだ知らない”という希望】

「みんなが知れば必ず変わる」。現状、まだほとんどの人が気候危機について知らないこと。今後皆が知って行動を変えれば危機を乗り越えられるかも知れないということ。

実際、私たちも地球環境の危機について知っているようで詳しくは知りませんでした。ゴミの分別はしてるしエコバックも使ってるけど、正直なところあまり環境について考えたことはありませんでした。でも、今回の講演で谷口さんから気候変動や異常現象について教えてもらったことで、これから少しでも行動に移そうという気持ちが強くなりました。

谷口さんはまた、日本では協調性が重視されているため「みんながやっているから自分もやる」という認知から行動の変化へのつながりが早い、それは日本のすごいところだ!とおっしゃっていたのが印象的でした。実際に谷口さんが今回のような講演活動を行えば行うほど、日本人の意識の変化を実感されているそうです。


【”これからの選択で変えられる”という希望】

みんなが自分の「力」と「自由と権利」をまだ使ってないこと。「今」は「過去」の私たちの選択でできており、つまり「今」からの選択でどんな「未来」でも作れるということ。

谷口さんは「私になにができますか?」という質問にいつも違和感を感じるそうです。なぜなら気候変動に関しては何か大きな悪の組織がいるわけではなく、すべて自分たちの行いが今の結果につながっているだけだから。そもそも自分たちで今を選んでる。どんな政治家に投票するのか、どの企業の製品を購入するのか、すべて自分たちの意思で変えることが出来る。だからまずは「何も出来ない」という認識を改め、当事者意識を持って「選ぶもの」を変えるだけで世界は変わっていく。つまり、自分が変われば世界が変わるということを強くおっしゃっていました。


また、自分の行動を変えるに当たってはあくまでも人に押し付けず自分が楽しんでやる必要があるいう注意点を挙げられていました。こういった社会・環境問題に強い関心を抱いている人は視野が狭くなりがちで、自分の”正しい”を人に押し付けようとする傾向があるが、”正しい”は人の数だけあるため、人は他人の”正しい”を押し付けられるとそれを嫌いになってしまう。だから何か変えたい時に押し付けるという行為は最も目的から自分を遠ざけることになってしまう。押し付けるのではなく、自分が楽しんでやっていれば自然とまわりに人が集まってくる。それが大事とのことでした。


D)私たちが今すぐ出来ること

これまでの状況もすべて私たちの選択が今を作ってきているし、これからの子どもたちの未来も私たちが良い方向に変えていける。一人ひとりが行動すれば世界は変わる。今出来ることを”選択”して行動していくしかない。そんな心強いメッセージを聞いて、今すぐに動きたい、何かしたい!という気持ちでウズウズしていた私たちに、今すぐ生活に取り入れられることは何なのかという具体的なアドバイスをくださりました。その5つとは・・・

1.ゴミを減らす。マイ箸やマイバックを使う。

2.省エネをする。再生可能エネルギーを選ぶ。

3.公共交通機関を使う。エコカーを選ぶ。

4.肉(牛肉、乳製品、植物性油脂)を避ける。

5.政府・企業・メディアに意思表示する!

どれも今日から始められることばかりですよね。急に全部徹底的にやることは難しいですが、環境のことを意識して少しずつ行動を変えて行きたいと思いました!


3.  参加者感想  

講演後のアンケートでは、なんと満足度98%※という結果になりました!参加者はみんな興奮冷めやらず、何かしたい!動きたい!という気持ちでいっぱいになったようでした。以下、参加者の声の抜粋です。

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正直、今まで環境問題はあまり関心が無くどこか他人事に思っていた部分がありましたが、親である自分が行動しないことで自分の子どもの未来を奪ってしまうことになると分かり、自分事として考えるきっかけになった。

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心を動かされるというのは今日のようなことなんだな、と思いました。心だけでなく行動にしていきます!

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素晴らしい企画をありがとうございました。子どもたちの未来のために、自分のできることをやっていこうという覚悟が決まりました。この熱い気持ちを忘れないように、仲間を巻き込んで一緒にやっていきたいと思います!

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今までは少し遠い存在として感じていた環境問題をより身近に感じられ、子どもたちの未来のために行動したいと心を動かされた素晴らしい講演でした。谷口さん本当にありがとうございました!

※「満足」および「やや満足」を含む。